2009年05月31日
ITストラテジストのための法務知識 請負契約
近年、増加するプロジェクト管理リスク2
=知的財産権と契約上の課題(準委任契約と請負契約)=
<問題提起>請負契約はソフト開発受託側に大きなリスクがある。このため、日本IBMなどでは ソフト開発を請負で行わずに準委任契約で受託する契約を結び開発に着手、 トラブルが発生して訴訟にいたっている物件もあるという。
- 請負でソフト開発を受託すると成果物の納品だけでなく品質と納期に責務を負う
- 成果物が納期までに納品されないと債務不履行に問われる。
- 納品後、ソフトに不具合があると瑕疵担保責任が発生する
- ユーザがソフト開発に協力しなくても、これらの責任に問われるケースがある
用語解説
債務不履行:債務不履行とは契約(約束)を守らなかったこと
民法415条:債権者は、債務不履行に対して、強制履行を裁判所に求めることができる。
民法414条:不履行に基づく損害賠償の請求をすることができる
瑕疵担保責任:瑕疵とは不具合のことである。
また、品質に関する善良なる管理注意義務を怠った結果発生した欠陥のことである。
担保とは補うということであり、不具合を無償で対処することである。
ソフトウェアの納品後に、ユーザの当初の仕様どおりになっていないことが証明された
ソフトウェアは無償で手直しが迫られることになる。
請負人の瑕疵担保責任は民法634条~640条に定義されている。
プロジェクトマネージャとしての対処
このため、プロジェクトマネージャは次のような対処手段にでる。
- システム開発フェーズを段階的に分割して、それぞれごとに契約を結び一括請負契約を回避する
- そうすれば、要件定義中に開発契約が中断しても、その部分のコストを回収することも可能である
- 通常、要件定義を準委任契約、外部設計から結合テストまでを請負契約とすることが多い
準委任契約と請負契約
我々コンサルタントの場合はソフトウェアなどの納品物がないため準委任
契約となり、通常ソフト開発は納品物があるため請負契約となる。
概要は表に整理した。
| 契約 | 損害賠償の請求ケース | 委託者による被害の立証 |
| 準委任 | コンサルティング業務や要件定義に漏れがある | 立証が難しい |
| 請負 | プログラムに瑕疵がある(瑕疵担保責任)、 プログラムが納品されない(債務不履行) | 成果物があることと、打ち合わせの記録が明確にあれば立証可能 |
開発トラブル回避のための対策
このようなトラブル回避のための重要な点を整理した。- 打ち合わせの記録を残しておく
- 相手側に連絡したクレームの送信、受信記録などを残しておく
- 見積り段階で明らかにならない要件は要件定義段階で洗い出す
- このため、契約前の見積り額が暫定であることに合意しておき、要件定義段階終了後の 開発範囲で再見積りを実施することに合意しておく
2009年05月30日
ITストラテジスト必須の法的知識=著作権編=
近年、増加するプロジェクト管理リスク1
=知的財産権と契約上の課題(著作権)=
<問題提起>契約上、知的財産権は重要な確認項目になる。これを放置すると以下のような問題が発生する。
- 著作権は特段の定めがない限り、受託側に発生する
- このため、プログラムに瑕疵が発見されても、また、要改善点があっても 受託側に無断で改変できない
- その結果、マシンリプレース時により良い提案があっても著作者の 協力がないと新しい提案に物件に移行できないことがある
- 著作者にプログラムが質に取られ、有効な情報戦略が実現できない
事例1
A社はあるソフトウェアをB社に委託して開発し、その際、特段の
著作権契約を結ばなかった。
この結果、マシンリプレース時に新しい機能を提案したC社に乗り換えたかったが、
現行システムの機能の開示をB社が拒んだためB社との契約を継続せざるを得なかった。
事例2
D社はあるE社開発のソフトウェアを販売する契約を結び、販売にあたって
E社に印税を支払う契約を結んだ。しかし、販売開始前に
E社開発のソフトウェアに改善すべき事項が散見された。
この結果、D社はE社にソフトウェアの改善を求めたが多忙を理由に拒否された。
D社による勝手な改変は許されないためD社によるE社ソフトの販売計画は中断した。
事例3
F社はあるHP開発業者G社にソフト開発を委託した。
しかしその際に委託契約書を結ばなかった。このため、HP引渡し後、
開発業者G社が「当社に無断でHPを更新しないように」と通達してきた。
この問題を受けてF社とG社は訴訟問題に発展した。結果はF社が勝訴した。
理由はHPは最新の情報に更新しなければ用途をなさないからであった。
この問題は地方で広く散見される問題である。著作権法
でも特殊な問題なので覚えておくと良いだろう。
- ソフト開発に当たって著作権は原則として受託側に帰属する
- このため委託側が開発契約の中で、著作権の貴族を委託側に帰属することを確認しておかなければならない。
- しかしHPの開発だけは例外であり、委託側に帰属する。
2008年04月03日
改正パートタイム労働法について
改正パートタイム労働法 2008年4月1日施行
改正パートタイム労働法の概要
パートタイム労働法が改正されました。この結果、パート労働者と正社員との差別的
待遇が禁止されます
このため人事制度や教育制度を見直す企業が出てきました。これはパートの待遇改善によって
優秀な人材を囲い込み、企業競争力を高めようとする企業側の戦略的な狙いもあります。
パートタイム労働法改正の概要は以下のとおりです。
- 雇用契約の際に、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無の明示を義務化
- 待遇の決定に当たり考慮した事項の説明の義務化
- 職務内容が正社員と変わらない場合の差別的待遇の禁止
- 職務内容が正社員と変わらない場合、教育訓練の実施を義務化
- 福利厚生施設などの利用機会提供の配慮の義務化
- 試験制度を設けるなど正社員転換推進の義務化
企業の対応施策
パートタイム労働法が改正に伴いさまざまな工夫をする企業が出てきています。 その概要は以下のとおりです。
地域限定社員制度
転勤や異動を好まない雇用形態の受け皿として「地域限定社員制度」がある。 その特徴は以下のとおりです。
- 転勤を好まない社員の勤務地を限定する
- 正社員待遇とした上で、賞与等を抑制する
- 優秀なパートを地域限定社員として登用する
- これによって社員間の待遇差を埋めつつ、人件費を抑制する
パート社員の教育制度の充実
パート社員へ「資格取得」への道を開く制度です。
- 資格取得支援を実施する
- 資格取得促進によって、資格手当て、役職手当などに格差がつきにくくする
- 正社員への道を開くことによって、パート社員のモチベーションアップを目指す
- スタッフのレベル向上によって顧客へのサービスアップを目指す。そのことによる競争力強化を狙いとする
人事評価の明文化、計数化
パート社員の正社員への登用を促進するための施策として人事評価の明文化、計数化の工夫を行う企業もある。
- パート社員の評価制度の見直しが必要
- 勤務態度や執務能力などの能力評価、人事評価を計数化
- 正社員に登用する水準の明確化
目標が明確になれば、優秀な社員の確保が可能になるという考えだ。
改正パートタイム労働法対応のメリット
パート社員の待遇改善施策を実施することによって企業は次のようなメリットがある。
かつてはアルバイトやパート社員は「雇用の安全弁」として考えられていた。
すなわち、切捨て、使い捨ての対象だった。しかし、
労働力人口が減少する将来を見据えて優秀な社員の囲い込みは企業命題の1つである。
その一例を以下に示す。
- 求人倍率の高い都市部における人手不足感の解消
- 派遣社員利用よりも業務ノウハウを蓄積しやすい
- パートの待遇改善で、人材の囲い込みを実施。企業競争力の確保
短時間雇用管理者の選任について
改正パートタイム労働法(第15条)では、 事業主は、常時10人以上のパートタイム労働者を雇用する事業所ごとに 「短時間雇用管理者」を選任するよう努めなければならないものとされている。
出所・参考文献
以下のWebを参考にさせていただきました。どうも有難うございます。- 日本経済新聞 2008年3月27日 37面 「改正パートタイム労働法 来月施行」
- 厚生労働省「講座会計学」
2005年09月13日
2005年9月13日 選挙をめぐるネット戦略について(公職選挙法)
選挙におけるネット封鎖はもはや古いか?
公職選挙法142条
公職選挙法142条では、金のかからない選挙 を目的としていて「選挙運動のために使用する文書図面は通常はがきまたは ビラのほかは頒布できない」と規定している。また、「違反すると、 2年以下の禁固または50万円以下の罰金」があるという。 このため、Webやメルマガは「文書図面」に当たるものとして、選挙の公示後 はWebの更新やメルマガの発行はできない。
公職選挙法できない主な選挙運動は次の通りである。
- 候補者や政党のWeb更新
- ブログの新設や更新
- メルマガの配信
- 電子メールの配信
- 第三者による応援サイトの開設
- 配布用マニフェスト(公約)のWeb掲載
海外の事情
欧米やお隣の韓国ではネットは選挙に不可欠なインフラと考えられ 自由に活用されているようである。
- 韓国では、相手の批判や虚偽情報以外はネット利用可能
- ドイツや英国では、各党が連日Webの更新
- 米国では1996年の大統領選を「ネット元年」としてネットでの政治資金集めも可能
- 米国では2004年にはブログが活躍
システムアナリスト加藤の所見
ネットによる選挙や候補者情報の掲載は、「お金のかからない選挙」を 推進するうえで重要な要素として検討すべきである。しかし、「2ちゃんねる」 などをみてもアンダーグラウンドな情報の根源になるなど、不正な利用が横行する 素地もあるの十分な注意が必要だ。 特にある地区の知事選ではネットが大きく活躍したといわれており、その地区の IT相談会に赴いたとき相談者から「候補者を当選させるネット戦略を教えて欲しい」 といわれ、即座に相談を断った経緯もある。 わが国の場合、今後選挙情報のネット掲載は緩和されてゆくべきと思うが、十分な規制に かかわる議論が必要だ。
2005年07月03日
2005年7月3日 流出するわが国の「知」
海外に流出する日本の知的財産権
上海で販売されている、クレヨンしんちゃんの商標は中国企業が抑えている。
このため、本物のクレヨンしんちゃん関連の商品が中国では販売できない。
中国では先願の知的財産を優先するからという理由からだ。
それ以外にもわが国の特許が中国や韓国に流出し、わが国の国際競争力を
低下せしめているだけでなく、国益を損なっている。わが国の知的財産権の流出
メカニズムについて論評したい。
特許情報が国外に流出する仕組み
中国や韓国の企業は、わが国の特許出願情報を検索している。特許庁のホームページ
中にある特許出願情報が検索される頻度は、1日当たり中国が17,000件、韓国からは
55,000件にのぼるという。
中国、韓国の企業は、数十台パソコンを使い、日米欧の特許出願情報を検索し、製品化に
役立つ研究開発情報を収集している。この結果、その企業の研究開発費は最小化できる。
中・韓企業が特許情報を検索する理由
なぜ、中・韓企業はわが国の特許情報を検索するのだろうか。それは、特許出願情報のうち 大半が、①特許が認められないことが多いから、②特許申請者が中国の国内での権利化をしようとしないことも 見越しているのだ。
特許を申請することは、ビジネスにとって利点だけでなく、リスクにもなりうる。 それは、特許申請によって出願技術の「技術公開」を行うからである。 有効な技術を公開して、特許をとらなければ、その技術は世界中に公開され、真似されて も文句も言えない。
特許出願の仕組み
特許というのは特許出願申請するだけでは取得することができない。特許の出願申請後に 審査請求しなければならない。そこではじめて、出願物件の審査が開始されるのである。
問題なのは、わが国企業の場合、年間36万件の特許を出願するにもかかわらず、その40%は 審査請求すらしていない点にある。これでは、禿鷹のような海外企業の好餌になってしまう。
特許庁サイトの課題
特許庁サイトの構造にも問題がありそうだ。わが国特許庁サイトでは、利用者の使い勝手 を考慮して、細やかな検索ができるようになっている。このため、海外企業の餌食になっているらしい
システムアナリスト加藤の意見
現在の上記のような問題を放置することは、わが国の知的財産流出に拍車をかけることになり、 大きく国益を損なっているのではないか。ある面、中・韓企業はクレバーだともいえる反面、 わが国、特許庁があまりにもお粗末ともいえる。
私どもも、特許庁にビジネスモデル特許出願を行っているが、一向に結論がでない。 特許審査結果の迅速化が図られれば、我々企業の経済活動は活発になり、企業競争力も、 企業価値も高まる。 下手な創業支援に、力点をおくくらいであるならば、我々のようなITベンチャー企業の 審査請求に対するレスポンスを改善したり、海外からの詳細な特許検索をフィルタリング する機能の付与などの施策がわが国政府にも求められると思う。