2005年8月26日

2005年8月26日 IT投資に関する地方の意識格差

IT普及と地域差

ITコンサルタントの本音
はじめに

 私はITコンサルタントとして、各地域や企業から要請を受けて、IT導入 やWebシステムの導入・運用支援をする立場にある。全国あちこちを渡り歩き 実務指導を展開するなかで、ITを普及しやすい地域とそうでない地域がある ことにうすうす気がついている。

IT普及しやすさは文化と気質

 結論からいうと、ITの普及のしやすさは、文化と気質に影響される ことが多い。結論から言うと「決断力がある経営者」「明快な経営戦略 を持つ経営者」はIT普及の支援がしやすい。

IT導入に対してなぜ「明快な経営戦略」が必要とされるのか。 それは、「IT化投資が目に見える効果を生みにくい」からであるからである。 また、「ITが経営者にブラックボックスになりやすい」からである。 IT導入に積極的に協力する経営者は、目に見えにくいものが見えている 人が多い。一言で言うと「想像力」「空間認識能力」「先見性」があるといえる。

 もう一つITの導入の障害になる要因がある。それは、「IT化投資の 抽象性」にある。例えば、「Webを導入したら本当に売れるのか?」とか 「わが社にどのようなメリットがあるのか」と聞く経営者がよくいる。、 そのような経営者はIT化投資の直前で投資をやめる事が多い。これは経営者が 「抽象的な効果に不安を覚える」からであって、このような人は勇気がなかったり 行動力がなかったりすることが多い。

地域の歴史や文化及び風土や環境は、人知れず人の気質に大きな影響を 与えることが多く。これが、ITの普及しやすい地域と普及しにくい地域を 有無原因となるのだろう。

長曽我部氏に見る一領櫃の文化

 戦国時代、四国を制圧した長曽我部氏は常に兵力不足に悩まされていた。 長曽我部氏の根拠地の高知県は今でも人口が80万人しかくなく、今から思うと よくそんな状況で四国を制圧できたものだと考えさせられる。

 長曽我部氏は兵力不足の解消法として一領櫃制度を考案した。この一領櫃 とは、百姓の次男坊でも、鎧の入った一領櫃と槍一本をもってくれば、士分に 取り立ててやるという制度である。この制度が、ざっくばらんで議論好きで、かつ さっぱりとした気風の高知県人を生んだものと思われる。このため、高知県では ユニークな発明をする工業人も多数輩出している。

 このため高知県人には余計な猜疑心を持つ人が少なく、逆にIT化投資上の疑問点 があれば率直に質問し、十分納得すればIT化投資に勇気を持って踏み込んでゆく 気風がある。

 また、高知県人がIT化投資に積極的な理由はもう一つある。高知の工業生産高 が全国で最下位であるため、IT化投資に活路を見出さなければならない経済環境も 関係があると思われる。高知は比較的物価が安い、従って工業製品を安価に作ることができる 。しかし、立地の不利性ゆえ、工業製品の物流輸送コストが多額となるため他の同様の 環境の地域に見積もり負けすることがあった。

IT化投資は経営者の資質と勇気が試される

 乱暴な言い方をするなら、一般論として「戦国武将が強かった地域のIT化 普及は比較的容易」であり逆のケースは大変難しいといえる。東京などのように 雑多な人々が入り混じった社会は別として、結構、人は昔のことを言い伝えで 覚えているものであり、昔の気質や人に裏切られた歴史などを子孫に伝えている ものである。これが、IT投資の最終局面の決断に大きな影響を及ぼすことがある。

 一般的に次のような経営者はIT化投資に向かない

  • 1.先達の資産・遺訓のみをを守るだけの経営者
  • 2.進取の気概のない経営者
  • 3.失敗を人のせいにして、自分で責任を取ることを回避するような経営者
  • 4.経営革新的な経営感覚のない経営者
  • 5.少しの勇気と行動力のない経営者

先にも述べたように、地域によって、IT化投資に消極的な経営者が多い地域と そうでない地域とがある。ある地域では、IT化投資で成功したら自分の手柄、 失敗したら経済団体のせいという態度を露骨に示す地域もある。 また、ある地域ではセミナーでは人が集まるものの(知的好奇心が旺盛か?) 一向に行動に移せない人の多い地域がある。察するにそのような地域の人々は、 とりあえず人並みに勉強しておけば、自分も遅れを取ることはないだろうという 意識なのだろう。

臆病な自分がなぜ創業できたのか

 自分は大変臆病な性格である。だから、失敗しないように経営を進めてきたつもりである。 しかし、なぜ、一応、経営者として6人の従業員を雇用しつつ、会社の利益を出すことができている のか。それには次のような理由があると思われる。

  • 1.常に時代の流れを見つめてきて、人生の節目節目でその時代で要求される 勉強をしてきたつもりである
  • 2.社会人が学問を続けることはリスクとコストが伴うが、そのリスクを 負いながら、学問を継続できたことがよかったと思われる
  • 3.失敗を人のせいにしない、事故責任で行動を行ってきた
  • 4.現状を是認せず、他人に追随せず、行動を自分で決定してきた
  • 5.有望な分野をかぎ分ける嗅覚を磨き、少しの勇気をもって行動してきた

 基本的に時代の変革期にあっては、守りが必ずしも守りになっていないこと が多い。特に昨今のような国際分業時代にあっては、いままでも既得権益を守り ぬくことは大変難しい。そうであるならば、このような変革期を 「ビジネスチャンスと捉えて」自分の能力を社会に問う気概が 必要とされるのではないか。

ZUKUDAS@松本への思い

 ZUKUDAS@松本は異業種の集まったビジネスサイトである。一般的に、個人主義的 といわれる長野県人気質にあって、学ぶ意欲、何かやってみようという意欲のある 人々が集まっている。問題は、その意欲を行動に転化できるかがZUKUDASサイトの 課題といえる。

 1年間の勉強会のあと、メンバーが大幅に再編された。この結果、勉強だけで 満足された方は去ったが、「何かやりたい人」が残った。また、 続々参加しようと申し出がある。
ただ難しい点は、多様な価値観をもつ「ソフトウェア業界人」のメンバを 束ね、統率してゆく器量が事務局とITリーダたちに求められている。  当面、ブログサイトを開設して、その反響や、そこからあがらアフィリエート 収入などで成果を評価しようという計画である。

 賢いけれど、集団としてあまりまとまって行動することの少なかった長野県人が、この難しい 命題をどのように解決できるのかについて私は興味深く見守ると共に期待している。

(c)アイ・リンク・コンサルタント 加藤忠宏



投稿者 kato : 23:00

2005年7月15日

スーパーマーケットのIT投資を考える

スーパーマーケット業化のIT投資

スーパーマーケット業界のIT化投資が増加している。日経流通新聞(MJ) 調査によると、2004年度のスーパーマーケット(SM)業界のIT化投資は2000年対比 で1.6倍の209億円(101社)となっている。これは1社あたりのIT投資額は 約2億円ということになる。

SMのIT投資の概要
IT投資の目的と内容

SMのIT投資の概要は次のとおりである。

  • インターネットテレビ会議:最新の効果的陳列法の店舗間共有
  • EDI、検品の自動化推進:販売費及び一般管理費 をウォールマート並みに売上対比16%台に維持し安売り実現
  • POSデータにコーザル要因の応用: POSから得られた販売高に、運動会や祭りなどのコーザル(非統制要因) を加味して、1週間の納品数を算出発注精度の向上によるロスの低下
  • ITによる部門データの統合管理: 発注、検品、販売データを統合し、一元管理。その結果管理部門コストを圧縮し 販売費及び一般管理費を売上対比12%台に維持し安売り実現
  • POP広告実現システム:効率的な陳列やPOP(店内広告)を 支援するソフトウェア
消費者の底離れ対策

SMがIT化投資を強化する背景として、消費者のSMに対する底離れに ある。このため、SMの経営戦略としてIT化投資を徹底して、 その結果、間接コストを圧縮して、EDLP(Every Day Low Price: 毎日が安売り)を実現して集客力を強化することを計画している。

事例

例えば、イオングループは、過去5年間にグループ全体でなんと 700億円のIT投資を行っている。また、ある企業は、年間売上高の 0.7%以上をIT投資に振り分ける方針を打ち出し、2006年度3月期は 売上高の1%の12億円を投資する予定だという。

システムアナリスト加藤の見解
直感的なIT投資額

プロのシステムアナリストとして、一般的な年間IT投資額は売上高対比で0.5%が 常識である。無論、この値は「大雑把」な値であり業界によって大きく異なる。 しかし、知っていて損のない数字である。

SMのIT投資の最新事情を見て思うこと

SMのIT投資パターンをレビューして、基本的には、従来並みの経営課題と 投資パターンだなと思う。従って、特に目新しいことはない。唯一、目新しい 点は「インターネットテレビ会議」だと思う。実店舗での 陳列の成功事例をテレビ会議で示しながら、その情報を共有化する。そんな 点が現代的だと思った。

基本的に従来型の小売業はいずれも苦しい。例えば百貨店、スーパーマーケット 商店街は長期的に衰退傾向にあるように思う。コンビニエンスストアも淘汰が 進んでいるように思う。また、大規模ショッピングセンターも規模と付加価値 (シネマコンプレックス)等の争いになっている。 その原因として、①インターネットなどの電子商取引の進展、②消費の成熟化 などが挙げられると思う。消費者は裕福になり、「特に欲しいものはない」 と考える時代になったのだ。

以上

参考:日本経済流通新聞2005年7月8日「その安値秘訣はIT」



投稿者 admin : 09:36