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2005年6月24日

2005年6月24日 書籍取次店の物流改革

消費者ニーズ重視への物流改革

出版不況といわれて久しい。我々著述業は印税率、出版部数とも大幅削減となり、 かつての出版作業に比べて多くの作業負担を強いられるほか、出版事業については 収入減少の傾向にある。

しかし、ネット書店は元気だ。ネット検索による書籍の検索性のよさ、加えて 翌日には書籍が届くという理想的な物流体制が受けているのではないか。 確かに、現在の本屋の場合、正社員でない店員も多いらしく、書籍のことを尋ねても 気の利いた答えが返ってくることは少ない。また、愛想もなく不愉快な思いをする こともある。ネット書店に実態の書店や出版取次店も学ぶことが多いのではないか。

改革すべきもの
現状の課題とあるべき姿

平成11年頃だったか。静岡県伊豆に仕事があってお伺いしたとき、書店の方の不満を 聞いた。それは私の「現在の売れ筋である『ダディー』(郷ひろみ)がないですね」という 一言に端を発していた。書店氏は「いや、加藤さん、我々がたとえ『ダディー』がほしいと いっても出版取次店は配本してくださらないのですよ」と。消費者のニーズを満たさなければ 勝てない。これでは本が売れないわけだ。旧態依然とはこのこと。「そうは問屋が卸さない」 とはまさにこれ!

ネット書店の優れたビジネスモデル

その点、ネット店舗は優れている。一端、ユーザ登録すれば、次からはcookie(クッキー) で認識してくれるし、購買履歴などから、お勧めの本を推薦してくれる。実際の人間よりも 気が利いている。また、物流体制も優れていて大概の本は翌日入荷する。これによってネット 書店の市場規模は2003年に490億円に達し、2年で3.3倍となった。予測として数年後には 書籍販売市場の10%のシェアを占めるといわれる。

消費者ニーズを満たす物流モデル(あるべき姿)

ネット書店は、通常自主在庫をもちつつ、あわせて出版取次店とも付き合っている。これに よって、1日200冊という新刊本も途切れることなく品揃えし、順次配達できる体制にある。 消費者のニーズを的確に満たすことにより、書籍の返本率も7~8%といわれ、実際の書店返本率 30%~40%程度に比べて大幅にコストや手間もを削減している。 出版社の返本コスト負担は年間総額で350億円といわれている。

出版取次店の物流改革
トーハンの出版社と共同した物流戦略

このような経営環境をにらみ、トーハンは埼玉県に300億円を投じて物流センターをつくり、 返本を含めた書籍の共同物流体制を出版社とは始める。在庫数は80万点、参画する出版社は 60社~70社といわれている。この体制で急な発注にも93%程度の体制で即納できるという。

日販のリテールサポート戦略

同様に、日販は、第三世代携帯電話で店内在庫の確認と受発注できるシステムを開発し、 書店15社と実験を始めた。POSとも連動することにより、きめ細かな在庫管理を行い、月額4千円 の利用料で実用化をめざすという。

システムアナリスト加藤の見解
物流改革が旧態依然の書籍流通システムを改革する

以前は、出版社も「取次店が扱ってくれるか」などを気をもみながら出版企画を立てていた。 また、書店も「取次店の機嫌を損なってはほしい本が入らなくなる」「僕たち弱小書店は 欲しい本があってもタイムリに入手できない」と嘆いていた。このような体制の是認が、 出版社の財務状態を悪化させ、かつ中小書店は廃業に追い込んだともいえるのではないか。

書籍取次店は通常の流通過程では問屋に相当する。他の市場では「問屋無用論」「中抜き」 が起こっている。だから、書籍取次店が物流投資に出る戦略は当然といえる。このケースも 情報戦略の要点は以下の3点に集約されると思う。

  • 物流改革 QR(Quick Response):消費者ニーズを満たす的確かつ迅速な物流
  • ムラ無駄の改革:返本コストに着眼し、返本コスト削減を経営目標の1つとする
  • リテールサポート:小売店の繁盛が自社の反映につながる

以上

参考:日本経済新聞2005年6月15日「出版物流、手本はネット書店」



投稿者 kato : 2005年6月24日 09:58